アスキー新書 143

書名:明治維新のカギは奄美の砂糖にあり

ISBN 978-4-04-868410-4

著者:大江 修造

2010年3月10日 発行

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 はじめに

 日本が明治維新のころ、中国は植民地化されていた。欧米の列強は競ってアジアに進出して植民地を確保していた。日本はなぜ、植民地化されずにすんだのか。もちろん欧米の植民地化の波に日本もさらされていた。

 植民地化の波がとくに強く押し寄せていたのは沖縄、奄美や鹿児島であった。薩摩藩は幕末のころ、この危機を強く意識し、日本最大の軍備を備えていた。その軍備により薩摩藩は薩英戦争に勝利することができ、徳川幕府を倒し、明治政府を樹立することができた。すなわち明治維新をなしえたのである。

 この軍備は、薩摩藩の豊かな藩財政により可能であった。なぜ薩摩藩は豊かな財政を持っていたのであろうか。その答えは、奄美の産する砂糖を独占販売して莫大な利益を得ていたからである。日本の近代化は明治維新により始まった。今日の民主的で平和な生活は、明治維新によっているといって過言ではない。

 明治維新は、従来、人物や事件中心に語られてきた。しかし、財政から語られることはなかった。俗にヒト・モノ・カネというように、大事がなされるときにカネが必要なことはいうまでもない。幕末・明治維新を語るときに、このカネを見過ごしていたのでは真実はわからない。真に幕末・明治維新を理解するには、財政面の知識を有していなければならない。

 小さい財政では小さい事しかなしえない。大きな事をなすときには大きな財政が必要である。この点を見落としていては真実がわからないばかりでなく、それ以上に間違った判断、ひいては誤った国民性が植え付けられてしまう。これまで明治維新が語られるとき、精神面ばかりに重点が置かれすぎた。よって、精神力で物事は解決できるという間違った精神構造が醸成された。先の大戦で我々国民は、大きなツケを払わされたといえる。

 なぜ明治維新における財政面が語られてこなかったのか。それは明治維新を推進した薩摩藩が、それを隠蔽したからである。ではなぜ薩摩藩は財政面の内案を隠蔽したのか。それは史上でも稀な収奪を奄美などから行っていたからである。明治維新から百四十年以上経過した今日、日本人はその実態を知る必要がある。

 幕末、なぜ日本は植民地化されなかったのか、いかにして明治維新は可能であったのかを、本書で明らかにしたい。

 

 目 次

  はじめに

  序 章 幕末・日本の置かれていた状況

     薩摩藩開国の理由

     沖縄は本土より七年前に開国させられていた

     欧米列強に振り回されていた薩摩藩

 

  第一章 薩摩藩vs奄美大島

     薩軍の奄美侵攻

     薩摩藩による奄美の支配

     徹底した差別

     薩摩藩の支配体制

     田畑家と奄美大島

     島津家と田畑家の家紋

     奄美の支配者

     奄美の偉人・田畑佐文仁

     琉球王の血をひく為家

     郷士格の取り立て

     田畑家の本祖

     田畑家と牧家の争い

     田畑家と西郷

     奄美大島が西郷隆盛に与えた影響

     砂糖の果たした役割

 

  第二章 徳川幕府vs薩摩藩

     薩摩藩の藩財政

     木曽川の治水工事

     藩財政の立て直しは奄美の黒糖の収奪

     薩摩藩の土地政策

     奄美大島の面積

     奄美大島における埋め立て事業

     奄美の砂糖収奪の政策

     密貿易

 

  第三章 幕末・なぜ日本は植民地化されなかったのか

     軍備増強の必要性

     薩英戦争の原因、生麦事件

     事件発生の背景

     薩英戦争の勃発と経過

     薩英戦争に勝利した日本

     薩英戦争の影響

     植民地化を回避

     なぜ日本は植民地化されなかったのか

 

  第四章 奄美の砂糖が明治維新をもたらした

     薩摩藩による奄美の間接支配

     奄美大島の砂糖

     奄美における製糖産業の歴史

     薩摩藩の突出した軍備

     本格的な近代的工場・集成館

     集成館における反射炉の建造

     海軍の創設

     開成所の設置

     海軍方の設置

     陸軍操練所の設置

     最新鋭の軍艦「春日丸」

     戊辰戦争における「春日丸」

     御法度の留学生派遣

     薩摩藩の財政収支における奄美の砂糖の貢献

 

  引用および参考文献

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