化学工学とは

東京理科大学 教授  大江修造

 「化学工学とは」一言で云えば,化学工場を設計・建設・運転するための工学である.

 化学の専門分野には有機化学,無機化学,物理化学,分析化学などがある.これらの専門のみでは化学工場の設計・建設・運転はできない.反応などにより得られる化学製品を工業化するためには化学工学によらねばならない.

 化学物質は純粋な形で存在するものは一つも無いと云っても言いすぎではない.例えば鉄にしてもアルコールにしても最初から純粋な形では存在しない.化学反応で得られる物質,例えば酸とアルコールからエステルを合成する場合を考えると,反応終了後に存在するのは酸,アルコール,エステルおよび水である.この4物質の溶液からエステルを分離しなければならない.

 化学工業では原料および製品を分離精製しなければならない.化学工場における分離精製の比率は極めて高く,一般的に80〜90%に達する.石油精製工業はほとんどが分離精製操作であると云えよう.すなわち,化学製品を工業的に生産するには分離精製ということが大きなウェイトを占める.化学工学では反応も取り扱うが,分離精製が主な対象であるのはこのためである.

 分離精製には種々の方法があるが,主力は蒸留である.化学工学は米国の石油産業が端緒となって誕生した工学である.化学工学は英語では Chemical Engineering と云い,化学工学の専門家を Chemical Engineer と呼んでいる.この化学工学を専門とする産業をPlant Engineering と云う.日本語でもエンジニアリング企業と云う.凡そ大小含めて国内には100社が存在する.したがって,化学工学専門家の職務は化学工場の設計・建設・運転と云うことになる.この中でも設計には多くの労力が裂かれるし,設計の良し悪しは完成する化学工場の企業化の成績に直接反映される.このように化学工学は極めて重要な工学である.このため,化学工学は国家公務員試験の化学部門の出題の約1割を占めている.

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