|
||
|
||
|
||
液体を加熱すると蒸発して気体となる。一方,気体を冷却すると凝縮して液体となる.すなわち,液体から気体ヘ,あるいは気体から液体へと相変化する際に,熱量の出入りがある.この熱量のことを潜熱といい,蒸発の際の熱量を蒸発潜熱と呼び,凝縮の際の熱量を凝縮潜熱と呼ぶ.相変化の際は温度変化がないので,あたかも熱の出入りがないかのようにみえるので,潜熱という。同様に,固体が融解して液体となったり,あるいは固体が昇華して気体となるときに加える熱量のことを,それぞれ融解熱および昇華熱という。 蒸発潜熱と凝縮潜熱の値は同一であるが,蒸発潜熱は加熱した場合の熟量であり,凝縮潜熱は奪った場合の熱量である.例えば,100℃の水が蒸発する際には,539cal/gの熱量を与える必要があり,100℃の水蒸気が凝縮する際には,539ca1/gの熱量を奪う必要がる。蒸発潜熱は温度および蒸気圧との間に,第4章で示したクラウジウス・クラペイロンの式,すなわち(4.6)式の関係が成立している.(4.6)式を変形すると, L/T=(V2−V1)dP/dT (7.1) となるが,理想気体の法則を適用し,液体の体積が無視できるほど小さいとき, L/T=RT/P・dP/dT (7.2) となる。したがって,蒸気圧と温度との関係からdP/dTを求めて,蒸発潜熱を計算することができる。蒸発潜熱の実測値として報告されている値の多くは,(7.2)式による計算値である.蒸発潜熱は温度の上昇に対して減少し,臨界温度でゼロとなる.各種物質の蒸発潜熱と温度との関係を図7.1に示す。いずれの物質の場合も,傾向は全く同しである。 7.3.2 蒸発潜熱の推算式 7.3.2.1 標準沸点における蒸発潜熱 沸点における蒸発潜熱をLb:ca1/g-molとし,標準沸点をTb:Kとすると,多くの物質では, Lb/Tb≒21 (7.4) となる。(7.4)式はトラウトンの法則といわれる。(7.4)式を無極性の物質について詳細に検討したキスティアコフスキの式がある. Lb/Tb=8.75+4.571logTb (7.5) 蒸気圧の関係式を用いて,標準沸点におげる蒸発潜熱を決定することができる.蒸気圧と温度の関係式を臨界点と標準沸点とに適用することにより, Lb=RTcΔzvb(Tbr’lnPc/(1−Tbr)) (7.6) が得られる.Rは気体定数であり,Tcは臨界温度K,Tbrは沸点の対臨界温度[−]である.Δzvbは沸点におげる圧縮係数で,1とおいてよい.(7.6)式はギアカロン式と呼ばれる。この式の精度を上げた式として,リーデル式がある. Lb=1.093RTc[Tbr(lnPc−1)/(0.930ーTbr)] (7.7) この式の精度は極めてよい. 7.3.2.2 蒸気圧データによる蒸発潜熱の推算 蒸発潜熱を求める温度における蒸気圧がわかっている場合は,ヒルデブランドの法則を佐藤が蒸発潜熱に適用した次式がある. 無極性液体の場合: L/T=23.61(P/T)−0.119 (7.8) 極性液体の場合: L/T=27.98(P/T)−0.105 (7.9) 【7.1’】シクロプロパンの標準沸点(240.4K)におげる蒸発潜熱をキスティアコフスキの式により求めよ. |
||
|
潜熱をトラウトンの法則を基礎とする推算式および蒸気圧などから求めます.計算例4題を掲載 |
蒸発潜熱・融解潜熱データを掲載
|
Copyright © Shuzo Ohe 2016- All rights reserved