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蒸留と言う語は広く知られていますが、ここでは工業的な蒸留塔(正確には精留塔)の仕組みを解説します。 |
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蒸気圧 |
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気液平衡 |
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蒸留計算 |
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蒸留の原理 |
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蒸留と言う語は広く知られていますが、ここでは工業的な蒸留塔(正確には精留塔)の仕組みを解説します。 メタノールと水の溶液を考えましょう。メタノールの沸点は約64℃、水は100℃です。メタノールは水より蒸発し易い性質を持っています。メタノールの50%入った液をフラスコで蒸発すると(図1)、約80%のメタノールが蒸発してきます(図2)。この80%のメタノールを取り出してきて、再度蒸発させますと約90%のメタノールがえられます(図2)。さらに90%のメタノールをとりだして蒸発しますと96%程度のメタノールを得ることが出来ます(図2)。以上3回の蒸発(単蒸留)でメタノールの濃度を50%から96%まで上げる事が出来ます。さらに4回、5回...と繰り返す100%に近いメタノールが得られることが分かります。 この繰り返しの様子を図3から図5に示しました。図3では単蒸留でとれたビーカの液を矢印で示す次のフラスコに移しています。ところが図3では加熱して発生した蒸気を凝縮した上で再度加熱しています。この無駄を取るために図4のように蒸気を次のフラスコに直接吹き込んで液を蒸発させます。 以上で蒸留の原理はほぼ説明できているのですが、図4を実際の蒸留塔に近い形に組み立て直したものを,図5に示します。図4と図5との違いには横を縦にした以外に青い線で示した液の戻しがあります。戻す液を「還流液」と呼んでいて、フラスコ内に液を確保するためと不純物を回収するために必要で極めて重要な役割を果たします。(蒸留と蒸発の違いは、液を還流するかしないかの違いとなります。) |
図1 単蒸留 |
図2 メタノールと水の気液平衡 |
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図3 蒸留の原理(単蒸留を繰り返して純度を上げる) |
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図4 蒸留の原理(無駄な加熱と凝縮を省く) |
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フラスコから蒸留塔へ フラスコで作った「蒸留塔」(図5)は如何にも不安定な構造をしています。安定的にかつ効率的に蒸留を実現するには、図6に示す内部構造の鋼鉄製の蒸留塔を使います。蒸留塔の内部で重要な役割をしているのは「棚段(トレイ)と呼んでいる部分です。この棚段がフラスコ1個に相当します。棚段の代表的なものとして多孔板と言われるものを図7に示します。棚段の上に液が貯まっていて、下から上がってきた蒸気がこの液に触れますと、蒸気は凝縮し、その分だけ棚段上の液が蒸発します。多孔板は平らな板に丸い孔を開けただけのものですが、フラスコと同じ役割を果たしているのです。 |
図5 「蒸留塔」 |
図6 蒸留塔の内部(文献2) |
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蒸留塔の内部 蒸留塔の内部では液は青い矢印、蒸気は赤い矢印で示す方向に流れています(図6)。蒸留装置としては他に加熱器や凝縮器があります。図6は蒸留塔本体を示しています。液をスムーズに流すために液降下部、出口堰、入口堰を設けます。 |
図7 蒸留塔の棚段 |
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参考文献 (1) 大江修造編著,「気液平衡データ集」、講談社,1988 (2) 大江修造著,「蒸留工学」、講談社,1990 |
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理大 科学フォーラム 2005年9月号 72−73ページより転載 |
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